2023-10-24
関節外科肩関節と求心位
肩の関節は、球形の上腕骨頭と受け皿である肩甲骨関節窩との関係で成り立っています。
求心位 = 肩甲骨関節窩に上腕骨頭がうまく入った状態
求心位を保つためには、腱板や関節唇などいろいろな要素が影響しています。


求心位がくずれる原因は、腱板や関節唇の損傷、拘縮です。
リハビリ加療で求心位に戻らなければ手術が必要です。
術後、求心位をキープするためのリハビリが重要です。
腱板とは
腱板は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋4つの筋腱で構成されます。
- 肩甲下筋(SSC) 内旋
- 棘上筋(SSP) 初期の外転
- 棘下筋(ISP) 外旋
- 小円筋(TM) 外旋

腱板断裂
加齢および繰り返す機械刺激、外傷を原因として腱板の腱線維が断裂した状態です。
40歳以上の男性で右肩(利き腕)に好発、発症年齢のピークは60歳、加齢変化で断裂を生じます。
60歳で4分の1、70歳で半数が断裂との報告もあります。
断裂しても症状がない人もいますが、夜間痛、動作時の痛みなど、症状がみられたら治療が必要になります。
当院の腱板断裂の治療計画
外傷性は早期治療の方が成績良好です。

当院の腱板断裂の術式決定

反復性肩関節脱臼
脱臼を繰り返すことによって軽微な力(日常生活)でも脱臼してしまう状態です → 手術が必要です。
- 鏡視下Bankart
脱臼の第一選択となる手術。
前方関節唇(ストッパー)を肩甲骨の受け皿の上に持ち上げて脱臼しないようにします。
装具の理解できる年齢で適応。
中学生以上~高齢まで - 鏡視下併用Bristow
ラグビー、柔道などのコンタクトスポーツ、てんかん、全身の弛緩性の病態、再手術例で行います。
烏口突起の骨を10㎜ほど切って、肩甲骨の受け皿の前でスクリューで固定、骨につく共同腱のスリング効果も手伝って、より強固な固定となります。
成長線が残っている年齢では①が優先です。
高校生~

手術までの流れ
全身麻酔を行うための術前検査
- レントゲン、心電図、採血、尿検査、エコー等
- 肩のアンケート
- 麻酔科診察で全身麻酔の説明、合併症などの確認

手術可能となれば
- 装具調整(義肢装具士)
- 手術説明(医師)
- 入院説明(看護師)
ノースリーブやキャミソールなど肩が露出する服、前開きのシャツなどがあると楽です。
かぶりものは、術後の肩に負担がかかります。
肩関節手術は、火・水・木曜日です。
手術前日の入院となります。


入院費概算(食事代含む)
高額医療費適用あり、3割負担なら9万円(1週)~13万円(3週)。
1、2割負担なら7万円(1週)~9万円(3週)。
3日の短期入院プランなら4.5万円~9万円。

入院日
入院時間は外来で決まります。
- 看護師の問診
- 病棟案内
- リハビリの術前評価
夕方16時頃、手術開始時間の目安が決まります。
一般的に深夜0時から絶食となります。
飲水ストップは翌朝、手術開始時間によって決まります。

手術日
肩関節手術の手術時間は1~3時間。
消毒、麻酔、装具、レントゲンなどで+1時間程度は手術室に滞在します。


手術時間の目安(状態で個人差があります)
| 拘縮 | 1時間~1時間半 |
|---|---|
| 脱臼 | 1時間半~2時間 |
| 腱板 | 1時間半~3時間 |
| 人工関節 | 2時間~2時間半 |
全身麻酔がかかってから、麻酔科医師がエコーを見ながら痛み止めのブロック麻酔をします。
術後はしばらく手がしびれています。
全身麻酔がかかってから座った状態になって手術を行います。
肩関節鏡手術とは
φ4mmの内視鏡を関節内に挿入、大量の水(アルスロマチック)を流しながら手術します。
- 三角筋を温存できます。
- 5mmほどの傷が3~5か所程度。出血の少ない、侵襲の少ない手術。
- モニターを見ながら術野を共有でき安全。
- 常に洗浄、感染の可能性が低い。
骨に糸のついたアンカーを設置して、糸を腱板や関節唇にかけて修復します。
金属は体内に残りません


リバース人工肩関節
2014年日本国内に導入。
適応は65歳以上で腱板修復不能、挙上困難(偽性麻痺)に対して三角筋の力を利用して肩をあげる人工関節。
他に粉砕の強い骨折や高齢者の脱臼に対しても適応になることもあります。
リバース人工肩関節の手術の傷は、5~10㎝ほどです。
術後10日くらいで抜糸です。
抜糸してからシャワー許可しています。


術後
手術翌日にガーゼ交換をします。
管を抜去して肩関節鏡の場合はシャワー許可になります(人工関節は抜糸してから)。
リハビリは平日は1日2回、土日も急性期はリハビリを行います。
術後約10日で抜糸します(外来でも可能です)。
退院の目安
- 更衣動作の自立
- シャワーの自立
入院期間:数日~最長4週間、平均12日



退院後の診察及びリハビリ
週1~3回の外来リハビリ(最初は2回以上)。
連携する開業医でのリハビリでも問題ありません。
最長5か月の外来リハビリが必要です。
診察の目安は3-4週に1回程度です。
術後3か月を超えると、経過により診察の間隔があきます
少なくとも半年~1年は経過観察が必要です。
腱板を修復した場合は、1年を経過しても1年に1回MRIでの腱板の評価を勧めています
術後に再建腱板の評価をMRIで行います

菅谷分類
| Type1 | 腱板に厚み,一様に低信号 |
|---|---|
| Type2 | 腱板に厚み,一部に高信号混在 |
| Type3 | 連続性は保たれているが厚みがない |
| Type4 | 一部のスライスで連続性がない |
| Type5 | 連続性の途絶部分が大きい |
Type1(最もいい)~5(最も悪い)
4、5(再断裂)であっても求心位がとれていれば問題ありません。
再断裂で手術が必要になる割合は2割程度。
全国的に再断裂率5~30%
当院は8.4%(154例中13例)
2023日本スポーツ整形外科学会で発表

腱板を縫合した場合
- 2~4週(断裂の大きさによります)で枕が外れてわきをとじられるようになります。
- スリングだけしばらく使います。
- 入浴(湯船につかる)も許可しています。
- 6週で自動運動(自分で動かす)開始。
- 自分の力で90度以上(肩の高さまで手があげられる)を10秒以上保持できるようになれば自転車、車の運転が可能です(6週~3か月)。
- (4~)6か月で力仕事およびスポーツ復帰を段階的に許可しています。

脱臼手術(鏡視下Bankart)の場合
ウルトラスリングを4週着用
- 1週~ 枕を除去して肩の運動を開始(リハビリで動かします)
- 2週 屈曲外転は90度まで
- 4週 外旋は0度まで
- 4週~ スリングを外して自分で動かす練習を開始します
術後3~5か月の外来リハビリ
(4~)6か月で力仕事およびスポーツ復帰を段階的に許可しています。
手術を行っても、再脱臼をゼロにすることはできません。
リハビリで脱臼しない姿勢を意識する練習をします。

リバース人工肩関節の場合
- 1週のレントゲン、CTで問題なければ、リハビリで動かす練習を開始します。
- 2週で枕が外れてわきをとじられるようになります。
- 3週でスリングも外して自分で動かす練習も開始します。
- 3~4週で退院、3か月の外来リハビリを推奨しています。
リバースは万能ではありません
痛みなく肩の高さまで手をあげられることが目標です
目標:挙上120度外旋30度内旋L3(腰に手が届くくらい)
インプラントが入っているので1年に1回のレントゲンチェックは必要です。
腱板や関節唇が生着する(骨にくっつく)のは4か月が目安です。
術後すぐに痛みがとれなくても心配ありません。
痛みが強ければ薬(注射)で対応できます。
肩が動くようになって、症状が改善するためには術後のリハビリが重要です。
すぐによくなる手術ではありません
リハビリの時間だけではなく、リハビリの先生に教えてもらったことを自分で練習することが最も重要です。
リハビリ終了の目安は術後5か月です。

術後成績
VAS=痛みの指標
0:痛くない~10:ものすごく痛い
2022年度手術実績






